胃から裏返るような、さするように鈍い痛みが頭を焦がす。
―――気持ち悪い。
それを口に出したくなって、それだけは絶対にしてはいけないと、とどまる。
これは聖痕だ―――なんて言うように我慢をしている自分が憎たらしくなる。
そんな筈があるか。
これは、この痛みの元となったものは目の前にあるものだ。
自分が奪ってしまったものだ。
だというのに、自分はそれを神聖なものだと思ってしまっているらしい。
その自己を正当化しようとする思考に反吐が出る。
やってしまったものは還らない、失ったものは戻らない、だからこそ自分の中に刻み付けてい
るんだといわんばかり。
できるならその痛みをそのままこの身にも刻み付けてほしい。
なんて、できるはずが無いからそんなことを考えている。
ふざけるな。
自分は分かち合おうと思いながら、その実は天井から見下ろしている搾取者だ。
その証拠にほら、体は、止まらない。
刺して、抉り、引き抜いて―――また刺して、抉って……その繰り返し。
冗談じゃない。
こんなのは人間への冒涜だ。
こんな、こんな、こんなこんなこんなこんな……!
相手を削り、喚かせ、鳴かせ、狂わせるこれが、人が人として生き残る最良の手段だなんて
……認めてやれるものか!
もう、気持ち悪さは言葉にならない声として体の内からはみ出ている。
とっくの昔に限界なんて来ているんだ。
思い上がるな!
そら、その自分から漏れ出している声を聞いてみろ!
まるで、いや、この震えが走るような音は明らかに獣のものだ!
そんな毒に犯されたこの頭に人の理性など必要ない!
―――そんなもの残っているものか!
ほら吠えろ!
力いっぱい吠えてみろ!
お前は人間なんかじゃない。
ただの力に従いその末端に成り下がった卑しい獣だ!
―――長い長い静寂の後、俺のヴァージンは終わった。
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